京都大学アカデミックデイ2014

津波被災者からのメッセージを読み解け

研究者からの一言:スマトラと日本の災害復興の経験をつなぎます

災害時の被災者支援では、生活再建などの直接的な支援だけでなく、被災者が発するメッセージを受け止め、伝えていくことも大切です。スマトラ島の巨大津波から10年。一人一人で異なる復興過程から時代や地域を越えて成り立つ意味を読み解きます。

出展代表者

地域研究統合情報センター
 山本 博之 准教授

参加者

地域研究統合情報センター
 山本 博之 准教授
 西 芳実 准教授

関連URL

http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/staff/yamamoto/

来場者より

これからもがんばって下さい賞
考えさせられたで賞
歴史を感じたで賞
私の災害への見方を変えてくれたで賞
説明を丁寧にしてくれたで賞
大切なことが伝わったで賞
心を打たれましたで賞
本当に大切な研究賞

研究者の本棚

本出展の参加研究者がお勧めする本をご紹介。

今の仕事(研究、進路)を選ぶきっかけになった本

若き数学者のアメリカ

藤原正彦著 / 新潮文庫

高校時代、1年間のホームステイ留学中に読んだ本。自分が日本人であることを忘れて現地社会の一員になるぞという意気込みで留学したが、留学先は多民族社会のマレーシア、しかもホームステイ先は民族的マイノリティで、「現地社会の一員になる」というのはどの人たちと同じになることなのか悩んだ。本書で「アメリカでは日本人らしく振舞うのが現地社会に馴染むことだ」と読み、その意味を考えることが後の研究につながった。

取り扱い: 京都大学図書館/ 京都府立図書館

殺される側の論理

本多勝一著 / 朝日文庫

子どもの頃から常識や慣例となっていた考え方や行動の一部は、実は米国の常識や慣例をそのまま持ち込んだものだという見方を本書で知った。ローマ字で名前を書くときに姓・名ではなく名・姓の順に書くこと、数字を書くときに4桁ごとではなく3桁ごとにカンマで区切ることなどをはじめ、1つ1つの言葉をどう書くかに書き手の意識が反映されるという考え方を知り、発せられた言葉の行間を読む習慣が身についた。

取り扱い: 京都大学図書館/ 京都府立図書館

今ハマっている本(誰かとこの本について話したい)

ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義

佐藤健志著 / 文藝春秋

子どもの頃から好きだったウルトラマンなどのテレビ番組や映画の背景に、アメリカの傘の下で平和を享受しているという日本社会の意識などが読み解けるという本。何気ない大衆娯楽でも分析の仕方しだいで時代性や社会思想を読み解くことができることに驚き、それまで考えもしなかった自分の意識を当てられたことやその手際の鮮やかさに驚く一方で、その読み解きに違和感が残り、別の読み解き方ができないかとずっと考えている。

取り扱い: 京都大学図書館/ 京都府立図書館

想像の共同体:ナショナリズムの起源と流行

ベネディクト・アンダーソン著、白石さや・白石隆訳 / NTT出版

1990年代頃の大学生の必読書という雰囲気があった。中身をよく読まずに「国民とは幻想の共同体である」という主張だと誤読されたりもしたが、「正真正銘」のナショナリズムは排他的ではなく自己解放をもたらす原理であるとしてナショナリズムを肯定的に捉えている。21世紀に入って世界各地で排他的なナショナリズムが勢いを増しているように見えるが、それでも本書の議論はなお有効なのか、今こそ改めて考えてみたい。

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若者にお勧めしたい本

こころのふしぎ なぜ?どうして?

村山哲哉監修 / 高橋書店

「こうすべき」「これはだめ」と理解はしていてもそのことがなかなか納得できずに適切に行動できないという経験は誰にもあるだろう。本書は、それを善悪や正邪からではなく人間の心の不思議という観点から解き明かし、適切に行動する道を探る。しかも、子どもにもわかるように説明する工夫が凝らされている。児童向けの本だが、大人になってからも読み返したい一冊。

人間の大地(上・下)

プラムディヤ・アナンタ・トゥール著、押川典昭 / めこん

海外旅行が手軽になったせいもあって東南アジアはずいぶん身近になった。しかし、一方的に親近感を抱いても、東南アジアの人々が日々何を考えているかがわかるわけではない。それを補うには現地の小説を読むのがいい。本書とその続編の『すべての民族の子』や『足跡』は、オランダによる植民地支配下のインドネシアが舞台になっているが、独立後の現在にも通じるものがある。

取り扱い: 京都大学図書館/ 京都府立図書館

自分の研究に関連して紹介したい本

災害復興で内戦を乗り越える:スマトラ島沖地震・津波とアチェ紛争

西芳実著 / 京都大学学術出版会

22万人以上が亡くなったスマトラ島の巨大津波から10年。その被災地でどのように復興が進んできたかを、建物や制度の再建・復興だけでなく人々の心の復興に目を向け、10年にわたって調査を続けた記録。「災害対応の地域研究」シリーズの第二巻。同シリーズ第一巻の『復興の文化空間学――ビッグデータと人道支援の時代』とともに、人文社会系の研究が被災地の復興や支援とどう関わるかを考えるのにも役立つ。

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脱植民地化とナショナリズム:英領北ボルネオにおける民族形成

山本博之著 / 東京大学出版会

複数の民族や宗教が混在する状況で、各民族が独自の民族意識や言語・慣習を維持しつつ、全体で1つの国民を構成するというナショナリズムのあり方を、1963年にイギリスから独立した北ボルネオ(現在のマレーシアのサバ州)について明らかにしたもの。第二次世界大戦による戦災を経験した北ボルネオの人々が社会をどのように再建・復興しようとしたかを、自分たちを世界にどう位置づけるかという点を中心に捉えた。

取り扱い: 京都大学図書館/ 京都府立図書館

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