京都大学アカデミックデイ2016

生きることが「アート」であるということ

研究者からの一言:何かを作り出すときのワクワクを共有したいです。

「アート」「美術」と聞くと、何やら高尚な感じがしてしまいますよね。でも、アメリカの哲学者デューイ(1859-1952)は、そうは考えませんでした。生き物が生きる糧をもとめて環境へ働きかけをすること。これがアートの始まりなんだと。そんな視点から、わたしたちの日々の経験を見つめなおしてみませんか。「上手い/下手」にとらわれず表現することのよろこびについて語った図工教科書、『子どもの美術』(現代美術社、1980-1995)も展示します。

出展代表者

教育学研究科
 西郷 南海子 日本学術振興会特別研究員

参加者

教育学研究科
 西郷 南海子 日本学術振興会特別研究員

来場者より

理想の女性研究者で賞
未来のこどもに触れさせたい内容で賞
アートで変わる未来の教育・多様な世界賞
すてきなお母さんで賞
入りやすい入口で己の生き方を見直したくなりましたで賞
話しやすかったで賞
キラリと光ったで賞
なつかしい教科書にめぐりあえました賞
小学生にもどりたいで賞
頑張ってほしいで賞
興味深い展示だったで賞
斬新だった賞
自由な創造推進賞
シンプルな生活美を愛しま賞

アカデミックデイを経ての感想

「生きることが『アート』であること」という大きなテーマでのポスター展示になりましたが、多様な視点・バックグラウンドから「アート」に関心をもつ方々が足を運んでくださり、わたしにとっても大きな刺激になりました。印象的だったのは、何名もの方が、子どもの頃の図工・美術の時間でつらい思いをし、その後もコンプレックスを抱えているということを吐露してくださったことです。子どもの描いたもの・作ったものが、その子の「表現」である以上、それを受け止め、発展へと導いていくプロセスの重要性をあらためて実感しました。

また、「アート」という概念は、美術にとどまらず福祉の分野など、人と人との「結びつき」に深く関係するということも、対話の中で再確認できました。このように、研究者が一方的に「説明」するのではなく、ご来場のみなさまが持ち合わせている経験と研究者のテーマが通い合ったとき、そこから新たな可能性が見えてくるのを感じました。

フォトギャラリー

研究者の本棚

本出展の参加研究者がお勧めする本をご紹介。

今の仕事(研究、進路)を選ぶきっかけになった本

子どもの美術

佐藤忠良・安野光雅ほか / 復刊ドットコム

「(この本は)じょうずにものを作ったりすることがめあてではありません」という文章から始まる、図工教科書。私は2011年に、絶版になっていたこの本に偶然出会い、衝撃を受けました。なぜなら小学校のとき、私は先生の顔色を見て、先生の気に入りそうな絵を描いていたからです。「教育」とは何かまで考えさせられる1冊です。私の呼びかけで、2013年に復刊を果たしました。

取り扱い: 京都大学図書館

今ハマっている本(誰かとこの本について話したい)

経験としての芸術

ジョン・デューイ(粟田修訳) / 晃洋書房

デューイは、芸術を、作品自体(モノ)としてはとらえず、作品の経験への「はたらき」としてとらえました。作者の経験の一部が、鑑賞する人の経験へと流れ込み、相互作用が生まれるのです。何か作品を見たときに「ぐっ」とくる、あるいは「じわじわ」くるあの感覚を、とてもよく表した本だと思います。

取り扱い: 京都大学図書館

若者にお勧めしたい本

アートで平和をつくる 沖縄・佐喜眞美術館の軌跡

佐喜眞道夫 / 岩波書店

時事問題としても注目される、沖縄の普天間米軍基地。政府との交渉の末、その敷地の一部を返還させて、美術館を立てた人がいます。この美術館では、丸木位里さん・俊さんなどの作品通じて、人間が人間らしく生きられる世の中を求めています。

取り扱い: 京都大学図書館

自分の研究に関連して紹介したい本

アウトサイダー・アート 現代美術が忘れた「芸術」

服部正 / 光文社新書

正規の美術教育を受けなくても、独学で独創的な作品を生み出す人たちがいます。中には精神疾患や知的障がいをもつ人たちもいます。彼ら彼女らの作品からは「作り出さずにはいられない!」という、エネルギーのほとばしりを感じます。

取り扱い: 京都大学図書館

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