アカデミックデイ2019
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学問が取り組む《究極の選択》?

研究者からの一言 学問的な「苦々しさ」のおすそ分け

概要

「どの選択にも犠牲が含まれるとき、何を選ぶべきか」を考えます。例えば、小惑星衝突を回避するため核兵器を使用してよいのかといった問題では、どの選択でも何かが損なわれるため、苦々しさが残ります。天文学、国際政治、医療・生命倫理の分野で生じる《究極の選択》を取り上げ、よりマシな選択を考えたいと思います。

出展代表者

大学院文学研究科
 大庭 弘継 研究員

参加者

大学院文学研究科
 大庭 弘継 研究員
 高木 裕貴 博士課程
 玉澤 春史 研究員
大学院理学研究科附属天文台
 河村 聡人 博士課程
iPS細胞研究所
 鈴木 美香 特定研究員
同志社大学
 大園 誠 嘱託研究員
政策研究大学院大学
 菊地 乃依瑠 専門職
山梨大学
 小松 志朗 准教授
北九州市立大学
 千知岩 正継 非常勤講師
東京大学
 中村 長史 特任助教

関連URL

来場者より

いろいろ考えさせられたで賞
意見をとり入れてくれたで賞
よく考えさせてくれる「もやもや」で賞
ワクワクしたで賞
究極の選択のその先を話し合いたいで賞
くさいものにフタをしないのですごい賞
学問が取り組む道賞
考えるチャンスをくれたで賞
究極をつきつめる賞
丁寧に一から説明してくれてうれしかったで賞
複雑で身近な問題をとりあつかってくれるで賞
私好みの内容だったで賞
選択はいつもどこでも究極だよね賞
考えさせられました賞
パブリックコメント化して国会に届けてほしいで賞
考えたで賞
一生分の問いかけ賞
究極の選択ベスト解決策を知りたい賞
ドロドロトロッコもいいで賞
自分のアイデアを尊重してくれたで賞
苦々しいで賞
詳しく教えてくれたで賞
自分の倫理感と損得との狭間で賞
色々考えさせられたで賞
東大でもやってみるで賞
平和になるで賞
おもしろかったで賞

アカデミックデイを経ての感想

 多くの方々に足をお運びいただき、また《究極の選択》に対し、私たちとともに取り組んでいただきありがとうございます。
 今回の報告では、難民問題、高額薬剤、宇宙技術を取り上げました。ただ今回は、人々の生死という狭い意味での犠牲ではなく、経済的打撃、社会の不安定、将来世代への悪影響といった広い意味での犠牲を取り上げました。そのため、なかなか《究極の選択》と感じることができなかったかもしれません。
 それでも例年にも増して多くの方々にご回答いただくことができ、また貴重なご意見を多くいただくことができました。
 困難な選択にお付き合いいただきありがとうございました。

当日報告・設問・ポスター作製者 

   大庭弘継(京都大学):国際政治学、代表
   大園誠(名古屋大学):政治思想史
   河村聡人(京都大学):天文学
   菊地乃依瑠(政策研究大学院大学):サイエンスコミュニケーション
   小松志朗(山梨大学):国際政治学
   佐藤恵子(京都大学):医療倫理
   鈴木美香(京都大学):生命・医療倫理学
   玉澤春史(京都大学):天文学
   高木裕貴(京都大学):倫理学
   千知岩正継(北九州市立大学):国際政治学
   中村長史(東京大学):国際政治学

当日参加できなかった設問・ポスター作製者
   一方井祐子(東京大学):サイエンスコミュニケーション
   笠木雅史(名古屋大学):実験哲学

   (代表を除いて、50音順。)  
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以下は、当日提示した「究極の選択」と投票数、来場者のノートです。 


【人道危機と難民問題】
あなたの国からは遠い某国で内戦が勃発しました。某国の国民(総人口約2400万人)のうち、隣国に難民として逃れた560万人を除けば、大多数の国民が某国内で国内避難民として生活しています。ところが内戦の激化により、その一部が新たに脱出し、豊かな先進国であるあなたの国にまで逃れようとしています。その数は、100万人と予測されています。

この人道危機に対して、あなたは世論調査で、自国への難民受入れに賛成しますか?

①逃れてきた難民をすべて受け入れる。:26票
②本当に困っている人々(子供など)を優先し、人数制限(10万人程度)をしたうえで、難民を受け入れる。:47票
③難民の受け入れを拒否する。:6票

〔自由記述〕
・一国の問題ではなく、原因は複雑で、遠い国が行ってきた行為・政策も、別の国や地域のある現状をつくりあげる素地になっていると思う。
・③だが、その国に援助する。
・文化、言葉が違いすぎる場合、受け入れない。
・他の形での援助


【医療資源の配分】
 ノーベル賞でも話題になった、画期的ながん治療薬オプジーボは、その値段の高さも話題になりました。一患者当たり約3800万円/年だったのです。公的医療保険制度を圧迫するとして、緊急薬価改定の対象となり、現在は約一患者当たり約1000万円(自己負担は高額療養費制度を利用し、約100万円/年)です。
 しかし、オプジーボのほかにも、画期的だが高額な新たな薬剤の登場が財政を圧迫すると危惧されています。2019年の5月には、一患者当たり3350万円/年となる白血病治療薬のキムリアが承認されました。
問 あなたの親がガンに罹患しました。すでに末期で、余命一年の宣告を受けています。高額医薬品を使用すれば、自己負担は月8万円で劇的に回復する可能性もあります。しかし、医療保険財政に負担となります。

あなたは高額薬剤の使用に賛成しますか?

※みなさま自身の親が、難病に罹患したとして、考えてください。また親御さんではなく、「子供」と読み替えていただいても構いません。

①使用に賛成する。:40票
②使用に反対する。:25票

その他:賛成と反対の中間に1票

【宇宙開発と軍事】
 宇宙デブリ(宇宙ゴミ)はロケットや人工衛星の破片が軌道上に漂っているもので、小さくても他の人工衛星に衝突し破壊します。現時点で、宇宙開発最大の脅威です。
 このデブリを除去する技術が研究されていますが、人工衛星の破壊にも転用できます。
 現在、宇宙の軍拡が進んでおり、宇宙での軍事衝突が懸念されております。アメリカは宇宙軍を、日本でも宇宙部隊を創設予定です。
あなたの国は、デブリ除去衛星を開発していますが、軍事転用も可能です。宇宙の軍拡を激化させる恐れもあります。一方、潜在的敵国は攻撃衛星を配備している可能性があります。

あなたは世論調査で、デブリ除去衛星に賛成しますか? 

※なお、自国の衛星がデブリを生み出さないように、デブリの排出抑制、衛星打ち上げ管理は、いずれの選択肢でも徹底するものとします。

①デブリ除去の人工衛星を開発し、打ち上げる。運用は、自国で行う。:26票
②デブリ除去の人工衛星を開発し、打ち上げる。運用は、国連の機関などに委託する。:47票
③デブリ除去の人工衛星を開発しない。:11票

(①と②の中間(自国運用と国際機関運用の中間):2票)

〔自由記述〕
・純粋な宇宙開発・宇宙そのものの、これらの価値とは?価値を探しているのなら、開発する意味とは?
・政府主導と民間主導では、---が異なる。政府主導では歴史的にみて、軍事技術をコントロールできてなかったのではないか?答えは②、ケースバイケース
・デブリ除去については、原因をつくった国が担当すべき、複数国の場合は、共同で担当すべき

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研究者の本棚

本出展の参加研究者がお勧めする本をご紹介。

= 取り扱いあり

自分の研究に関連して紹介したい本

資料で読み解く「保護する責任」―関連文書の抄訳と解説―

中内政貴、高澤洋志、中村長史、大庭弘継編

遠く離れた地域で苦しむ見知らぬ人々に対して私達は何をすべきか―この一見素朴な問いに、研究者は頭を悩まし続け、政策決定者は試行錯誤を重ねてきました。そうした模索から生まれ賛否両論を巻き起こしているのが、本書の扱う「保護する責任」という概念です。皆冷戦終結後の四半世紀に繰り広げられてきた議論の軌跡を、この資料集で確認してみていただければと思います。全120の資料に翻訳・解説付きです。