共通の姿勢を持つ異分野の3人だからこそ

『PLANTA』という伝統ある専門誌が認める成果となったのは、3人の専門分野が、異なるものの少しずつ微妙に重なっていることが大きかった。化学式は共通言語となり、それぞれが担当する実験は、実際にできなくとも説明されれば理解できる。かけ離れた異分野の研究者が集まっただけでは、学際融合的な研究を進めるのは難しい。しかし、柘植と肥塚、古田の3人は、植物好きという共通点に加えて、異分野で専門が違うけれども「どうやって答えを繋げていくか」の姿勢があったからこそ、出会ってから5年以上にわたって共同研究を続けられているのだろう。

研究の合間に集まって話しているときに一致したのは、「研究を楽しもう」という姿勢だった。3人は、「自分たちが面白いと思うことを、普段のメインのテーマとは別に、空き時間を使って効率的にやって、学生や周りから何やっているんだろう?って言われながらも、気付いたら論文になるってカッコいいよね」とよく話していたという。だからこそ、ビワの花の香りについては、がむしゃらにそればかりやっていたら、格好が悪いとも感じていた。3人とも、上司や学生との共著を気にせず、本業の片手間に余力でのびのびと謎解きを楽しんでいたのだ。

しかし、本業とは違うといっても科学的な研究であり、裏付けや検証は不可欠だ。そのために3人がそれぞれの分野で本領を発揮し、1人ではできなかったことを為し遂げた。柘植は、「分野ごとに、持っている情報やアプローチの常識は違います。研究は気分転換にもなりましたし、バックグラウンドの違いをそれぞれ面白いと感じて、そしてそれらは本業にも活かしていける知見にもなりました」と振り返る。

柘植が高品質なRNAをとって肥塚が酵素活性を確認し、酵素活性を見るために古田が不純物のない基質を合成するという、それぞれが担当した部分は、説明されればわかるものの、実際に手を動かせと言われても無理なものばかりだ。全く違う分野の3人が、植物好きを共通項に集まって、やり始めたら最後までやり遂げると一致団結したからこそ、まとまった成果に繋がった。しかも、それは、自分たちの分野のしきたりに縛られないで、柔軟性をもって取り組む必要があると、3人が理解していたことがポイントだった。

宇治キャンパスのビワの木を背にした3人
宇治キャンパスのビワの木を背にした3人

植物好きな古田にとって、自分の専門とは縁遠かった伝統ある専門誌に、3人連名の論文が掲載されたことはとても喜ばしいことだった。古田は、「僕は昔、こういうことをやりたかったんだな、と。2人と付き合うことで(昔の夢が)実現できているという実感があるので、楽しんでやっています」と話す。今の主な研究分野が薬学や合成化学となった古田にとって、合成化学ばかりだった業績の中に植物の論文が『PLANTA』に掲載されたのは、非常に感慨深いことなのだ。

発端は飲み会の席上の楽しい話題で、取りかかった当初は「それぞれ個人で論文をだせばいいか」くらいの軽い気持ちだったが、実際に研究を進めていくごとに幅が広くなり、そして成果につながった。成果は学会でも発表し、そして専門誌にも掲載された。最初の論文が『PLANTA』に載ったあと、3人はビワの花の香りをテーマに研究を続け、すでに合計3本の論文に加え、日本語コラムを発表。趣味から始まったものが、本当の研究に発展した。今は京都から離れた肥塚も、「2人にはいつもウェルカムでいてもらえて、とてもありがたい」と、何かあれば宇治キャンパスにやってきて議論を重ねている。まさに、宇治キャンパスを舞台に、異分野研究が花を付け、実を結び続けている。