2016.03.28

広がる関係性技術

 全世界で50万ダウンロードを突破したスマートフォンアプリ「ウゴトル」を開発した株式会社アウン・インターフェースの西川玲氏は、新熊の関係性技術をウゴトルに取り入れようとしている。このアプリは、一コマ単位で動画を再生したり二つの動画を比較できたりする多機能な動画再生プレーヤーで、元々は西川氏が趣味で続けるダンスの動きを撮影して振り付けなどを見直すため、「自分が欲しかった」機能を実装した自分のためのアプリだった。ところが、アプリを無料公開したところ、操作が簡単で自由自在にコマ送りができることから、ダンスの愛好家のみならず、フォームなどをチェックしたい陸上選手やテニスプレーヤーといったスポーツ界の人々も活用するなど、国境を越えて人気が高まった。西川氏はこの「ウゴトル」を進化させるため、関係性技術の導入を考えている。

 西川氏は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)未踏IT人材育成・発掘事業の2008年度上期スーパークリエータに選ばれた人物で、別のアプリ開発プロジェクトで新熊と出会った。専門はユーザーインターフェース分野だが、新熊の関係性技術の可能性にいち早く気付いたという。ウゴトルに関係性技術を応用させることで、アプリのユーザが労力をかけずに、参考にしたいと考える「近しい」ウェブ上の動画に出会えるようになるからだ。

関係性技術を使ったスマートフォンアプリ「おもりんく」と「ウゴトル」
関係性技術を使ったスマートフォンアプリ「おもりんく」と「ウゴトル」

 一方、有限会社ライフウェア・サービスの平尾泰良氏は2014年、ソフトウェア開発などでつきあいのあったKDLに誘われ、MSSFに参加した。関係性技術については何の知識も持ち合わせていなかっため、最初は色々と戸惑ったという。しかし、新熊が開発した「おもりんく」を見て、地域再生や観光に使えるのではないかと思いついた。

 システム開発者としての経験が豊富な平尾氏は現在、地域の情報誌や全国の観光地情報提供サービスなどを手がけている。同時に、地方への移住希望者に対する情報提供方法についても道を探っていた。地方公共自治体には移住政策に積極的なところもあるが、移住希望者と受入側の希望がうまく合致しなければ、不幸な結果をもたらす。ここに、「おもりんく」で使われている関係性技術が応用できると考えたのだ。

「地域再生や観光には、人を呼び込むことが必要です。呼び込む人は誰でもいいわけではない。その地域に、何かしらの関係がある人がやってくることで、双方にとって幸せな結果となる。そのために、この関係性技術が役立つと思います」

 平尾氏は「おもりんく」が京都版のみに限定されていたことで、もどかしさを感じていた。例えば、情報や人が集まる東京版ができれば、各地でデモストレーションがしやすくなる上、「移住マッチング」にも拡張できると考えたからだ。さらには、デジタルとアナログを融合させた観光情報発信を目指せるとしている。平尾氏が寄せた機能を拡張する要望に応える形で、「おもりんく」は2015年10月に全国版に対応。今後のさらなるアプリ発展に期待が寄せられている。

 このほか、研究者や最新技術とはあまり接点がないと思われる流通業界も、関係性技術に注目する。株式会社三越伊勢丹商品統括部ソリューション統括部の地域店・EC・中小型・新規ビジネス推進担当マネージャー草道敏也は、産業技術関連の展示会で関係性技術に出会った。草道氏は、日本の百貨店でこれまで大きな役割を果たしてきた外商員を、関係性技術を使ってロボットに置き換えられるのではないかと想像する。

「外商員は究極のコンシェルジュとして、各家庭に適時、適正なソリューションを提供してきました。しかし、現代では昔のように多くの人材を外商員として配置できない上、外商員の個人差で提供サービスに差がでることは避けたいのです。関係性技術を応用したロボットを各家庭に配置できれば、外商員の代わりとなるのではないかと考えました。それに、物品の購入に直接繋がらなくとも、各家庭にコミュニケーションできるロボットがいる未来は、考えるだけで楽しいじゃないですか」

 草道氏はまた、研究者に百貨店をうまく利用してもらいたいと話す。「日本橋三越本店では『Hajimarino cafe』という場所を創り、様々なイベントを通じて人やモノをつなげようとしています。研究者や主婦は直接の接点が少ないのですが、それぞれが外に出てこういった場所で出会ってもらえれば、百貨店も産学連携に参加できると考えています。実際、Hajimarino cafeを最先端技術のプレスリリース場所として使ってもらい、その組み合わせの意外性から話題になりました」

 関係性技術が、様々な分野で活用され始めていることが分かる。