日本に「宇宙総合学」の拠点を作る

 

 ここまで、学際融合的な試みを中心に宇宙ユニットの活動をご紹介してきた。2014年からは、これまでの宇宙ユニットの活動をさらに発展させ、学生教育・人材育成に重点を置いた大学院教育プログラム「宇宙学」が正式に始動する。既存の学問分野の枠を越えた新しい課題に挑む意欲と能力を持った学生を育て、共に新しい学問を切り拓いてゆくプロジェクトである。

 宇宙ユニットはこれまでも先端的な研究と様々な社会連携活動だけでなく、大学生、大学院生はもちろん小中高生を対象にした教育面にも力を入れて来た。しかし、様々な角度から宇宙に興味や関心を持った彼らを、幅広く受け入れることのできる学問拠点は、世界のどこにも存在しない。壮大な広がりを見せる宇宙に対して、それを学ぶためのルートはいまだ限定的で見えにくいとも言える。

シンポジウム「宇宙にひろがる人類文明の未来」には多くの高校生や大学生も参加した。
シンポジウム「宇宙にひろがる人類文明の未来」には多くの高校生や大学生も参加した。

 柴田教授は、本プロジェクトを世界に向けて情報を発信するセンターとして発展させたいと語り、「日本人の研究には独創性がないと言われることがありますが、問題は発信の仕方にあると感じています」と続け、他に類のない「宇宙学」の拠点作りに意欲を見せた。また磯部准教授は、柴田教授の「宇宙天気」の書籍を例に挙げ、多くの学術書や論文に英語が使われる中、最先端の研究成果が日本語で書かれることの意義を指摘した。「世界中の人と共同研究を進め、研究成果を発信するには、英語で議論や発信ができなければならないのは当然です。一方で、独自の文化圏の中で独自の言語を用いた最先端の学術研究の営みが日本にあることは、知の多様性を担保しそれを後世に伝えるという観点から、我々の大きなアドバンテージであり、かつ人類全体に対する責務だと考えています」

 かつて宇宙開発は限られた先進国の国家プロジェクトとして進められるものだった。しかし近年は新興国や民間主導の宇宙開発が進み、また人工衛星による通信放送、測位、地球観測などは現代社会に必須のインフラとなっている。人類と宇宙の関係が新しい局面に入ったことで生じる諸問題に取り組み、これからの宇宙開発利用を担う人材を輩出することが、新しい段階へと進んだ宇宙ユニットの役割である。そして、それらの新しい諸問題に取り組むことは、単なる直近の課題への対応に留まらず、新しい学問を切り拓くという宇宙ユニット設立当初からの目的にも役立つだろう。

 「日本のアマチュア天文家は世界一」と柴田教授が認めるように、宇宙に関心を持つ裾野は広い。また、磯部准教授は「研究を進めるのに一番効果があるのは、意欲と広い視野を持った若い研究者を増やすことです」と語る。宇宙への興味を媒介として、既存の枠を越えた人と人の出会いを創出する宇宙ユニットが果たすべき役割は大きい。

 

柴田一成(しばたかずなり)
京都大学理学研究科附属天文台長

 

磯部洋明(いそべひろあき)
京都大学宇宙総合学研究ユニット特定准教授 

 

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