ガーナの食料問題解決に向けて家畜の飼育を支援

――ガーナの野生動物の家畜化というのは、JICA(国際協力機構)草の根技術協力事業として取り組んでいる研究ですね

村山教授 西アフリカにあるガーナの北部は、食料供給が不安定なんです。特に動物タンパク源が不足していて、子どもの発育が南部に比べて圧倒的に悪い。とはいえ、気候が厳しいのでウシやブタなどの飼育は難しい。そこで、新たな家畜として、在来の動物であるグラスカッター(アフリカタケネズミ)の飼育を支援しようというプロジェクトです。

JICA草の根技術協力事業「在来家畜生産の効率化によるガーナの食糧事情向上支援」のロゴ (c)清原なつの
JICA草の根技術協力事業「在来家畜生産の効率化によるガーナの食糧事情向上支援」のロゴ (c)清原なつの

――グラスカッターとはどういう動物ですか。おいしいんですか?

村山教授 ネコくらいの大きさで、肉は脂肪が少なくて豚肉のあっさりした感じです。ガーナの人が一番好きな動物ですね。普段は野生のものを捕まえて食べているんですけど、狩猟に頼っていては生態系に影響を及ぼしたり、感染症の危険もあるので、家畜化するのがいいだろう、と。

――遺伝子の働きはどのように活用されているんですか

村山教授 グラスカッターの遺伝子マーカーを作製したり、ゲノム解析で遺伝子の塩基配列を調べたりして、おとなしくて家畜に適しているという部分を見つけ、それをもとに家畜として選抜、改良をしていこうとしています。家畜として順調に育てていくために、野生個体がどんなエサを食べているかといったことだけではなく、健康状態を見るための腸内細菌や、病原体となる感染菌や寄生虫なども調べています。

現地では、村ごとに3軒の農家を選んで、あらかじめ繁殖させておいたグラスカッターとケージを支給して、飼い方のノウハウをお伝えしています。飼育は今のところ順調で、子どもが生まれたところもあり、少しホッとしています。原因がわからずに急に増えなくなったりすることもあるので、安定してずっと飼い続けられるようになるまでには、もう少し時間がかかりそうですが。

――村の方々の反応はどんな感じですか

村山教授 すごく大事に育てていますよ。家の中庭の一番いい場所にケージを置いて。彼らはニワトリやヤギなども飼っているんですが、基本的に放し飼いなんですよね。動物をずっとケージに入れておくという飼い方に慣れていないので、少し大変さもあるようです。

ガーナ大学の表敬訪問を受ける山極総長(写真右)。村山教授(写真左)とプロジェクトのTシャツを着て
ガーナ大学の表敬訪問を受ける山極総長(写真右)。村山教授(写真左)とプロジェクトのTシャツを着て

――この事業がビジネスとして発展する可能性もあるんでしょうか

村山教授 今、ヨーロッパではブッシュミート(アフリカの野生動物の肉)の違法な輸入が増えていて、感染症や自然破壊などの面で問題になっています。ブッシュミートはヨーロッパに住むアフリカ移民たちを中心に需要があるのですが、違法な形ではなく、適正に輸出入されるようになれば、とても大きなマーケットになると思います。私たちは、飼育したグラスカッターの肉を缶詰に加工する計画も進めていて、クリアすべき点は多いのですが、将来、安全な食品として流通させることもできるのではないかと期待を持っています。