「科学をひとつの文化として育ててほしい」

―― 子どものころから研究好きだったそうですね

永田特任助教 生き物がどうなっているのかを調べるのが好きでしたね。焼き魚の内臓を分解してみたり、アサリのみそ汁で貝の構造を確かめたり。母親にひんしゅくを買ってましたけど(笑)。

夏休みの自由研究も、キノコ採集や廃油を利用したせっけん作り、紙漉きにあこがれて和紙作りもやりました。和紙の材料になるコウゾやトロロアオイが手に入らないので、植物に詳しい母に相談したり、自分で調べたりして代用品を探して、カジノキとオクラの根を使いました。オクラの根にかぶれて、目が腫れてしまって大変でしたが(笑)。頭で考えるだけじゃなくて、実際に手を動かしてやってみるのが楽しかったですね。

―― そうした楽しさが研究者の道へとつながったのでしょうか

永田特任助教 そうかもしれませんね。今でも仮説を立てて、検証していく過程が楽しいです。ひとつのことを考えはじめると、世の中が全部それに見えてきてしまいます。なかなかうまく発現してくれないGFP(緑色蛍光タンパク質)融合タンパク質を観察しているときなんか、ラボの行き帰りに青信号を見ただけで「私のGFPもこのくらいきれいに光ればいいのに」とか考えてしまいます。

GFPで可視化された細胞を楽しそうに説明する永田助教
GFPで可視化された細胞を楽しそうに説明する永田助教

―― ほかの研究者と意見交換したりもするんですか

永田特任助教 もちろんです。自分ひとりで考えることも大事だと思いますが、いろいろな方面からの検討も必要なので、意見を伺うことは多いですね。自分の考えを話して、相手が「オモロイやん」ってノってきてくれたら、どんどん盛り上がっておもしろい仮説が出てくるんですよ。ディスカッションすることで、研究が膨らんでいく感じですね。

ただ、やはりディスカッションして話がどんどんおもしろい方向へ膨らむ相手と、ネガティブな反応ばかりで話がしぼんでしまう相手があるので、おもしろいディスカッション相手を探せることも、能力のひとつかもしれません。

―― ワクワクしながら研究されてるんですね

永田特任助教 特に顕微鏡を見るのが好きですね。顕微鏡で何かを見て、「わっ!なんか変なものが見えた!」というところから始まって、こうじゃないか、ああじゃないかと考える。最近、あるABCタンパク質を観察していたら、細胞膜がすごく変な形になるのを見つけたんです。なんでだろ?と、その理由を知りたくて、おもしろがって実験しています。そんな構造があるということは、生物的に意味があるということ。どういう必要があってそんな形状をとっているのか、その意味がわかったら、遠回りかもしれないけど、病気の予防や治療に役に立つこともあるかもしれないですしね。

―― 気の遠くなるような作業にも思えるのですが

永田特任助教 確かに、すぐに何かに役立つ成果が出せるわけではありません。でも、サイエンスは次々と疑問が出てきてそれを解決していくのがおもしろいんです。だから、わからなくても、がっかりしたり徒労感が残ったりすることはないですね。

先日、ノーベル生理学・医学賞を受賞された大隅良典教授が「すぐに役に立つかどうかではなく、将来を見据えて、科学をひとつの文化として認めてくれるような社会にならないかなと願っている」とおっしゃっていました。文化って数値化できないし、何の役に立つのかわからない。でも、長い時間をかけて探究することは、きっと人間を豊かにしてくれると思うんです。だから大隅先生のおっしゃる「科学を文化に」という言葉が心に響きます。

永田特任助教の実験ノート
永田特任助教の実験ノート