惑星形成論とクラシック音楽の関係

――研究以外で興味のあることはどんなことでしょう

佐々木助教 クラシック音楽でしょうか。色んな演奏を聞き比べたり、新しい試みの演奏があったら何がどう新しくなったのかを確認して、私の感覚と照らし合わせたりします。それに、惑星形成論はクラシック音楽に似ているんですよ。

クラシック音楽は、過去の楽譜をもとに演奏します。ただ、古い楽譜には速度記号や当時の暗黙の了解といったものが書かれていないので、完璧ではありません。指揮者は楽譜から読み取れる情報を自分なりに解釈し、音楽をつくり上げていきます。

惑星形成論の場合、すい星や隕石(いんせき)を分析することで、太陽系が誕生したとされる約46億年前の情報を得ます。この得られるデータが「楽譜」で、情報の数値をシミュレーションするコンピューターが「楽器」、数値計算の結果が各楽器の奏でる「音色」といえるでしょう。

――もう少し詳しく惑星形成論とクラシック音楽の関係を教えてください

佐々木助教 ちりやガスが衝突して惑星が誕生する際には、さまざまな物理過程が生じます。それぞれの場面で、ちりから火星ほどの大きさになる道筋を追う研究者や、木星ができる条件を検証する専門家などが、数値をシミュレーションします。私は、数値計算の結果から本質を示す簡単な数式のみを抽出してつなぎ合わせる手法で、太陽のような恒星の誕生から惑星ができるまでの一連の物理過程をシンプルな理論モデルで表し、惑星をつくるシナリオを完成させます。

指揮者のように、「楽譜」といえるデータを読み、「楽器」の特性を十分理解したうえで「音色」の数値計算を総合し、演奏全体のバランスまで気を配って音楽を構築する。こんな風に惑星科学者は音楽を奏でて“惑星をつくって”いきます。

同じ楽譜でも、指揮者の解釈によって音楽は変わります。惑星形成論も、その点が似ています。例えば、同じ隕石のデータに対して、それまでとは異なる物理的解釈で数値計算をやり直すことがあります。新しい結果から全体の理論モデルをつくり直して「再演奏」すると、新しい惑星形成のシナリオが描けるのです。

また、惑星科学者が理論的につくった惑星系は、不完全なデータをもとにしているので、解釈が間違ってしまう可能性も高いのです。ある「演奏」を聴いた別の惑星科学者が、これまで常識と思われていた中に何らかのほころびを見つけて、その「演奏」は当時の本当の「楽譜」、つまり惑星系の姿を示していないと指摘する場合もあります。

惑星形成論とクラシック音楽の関係について説明する佐々木助教
惑星形成論とクラシック音楽の関係について説明する佐々木助教