競争がもたらす種分化

2014.03.05

 高橋鉄美 理学研究科研究員らの研究グループは、アフリカ東部のタンガニイカ湖(淡水湖)に生息するシクリッド(熱帯魚)Telmatochromis temporalisのサイズ2型を用いて、生殖隔離に「競争」が関係している例を世界で初めて示しました。

 本研究成果は、2014年2月28日(英国時間)に英国科学誌「Nature Communications」誌に掲載されました。

概要

 Telmatochromis temporalisには大きさの異なる2型が存在し、生殖的に隔離しています。この魚は草食性で、大型魚などからの補食の危険に曝されています。そのため、物陰に隠れて補食を避けます。しかし、隠れる場所が2型で異なり、体の大きい普通型(写真左)は岩の隙間に、小さい矮小型(写真右)は、シェルベッドにある巻貝の殻に隠れます。遺伝学的な研究により、2型が生殖的に隔離していることが分かっています。そこで本研究では、どうして2型が交雑しないのかを明らかにするため、水槽を使った行動実験を行いました。

 実験の結果、オスではどちらの型も岩場を好みますが、体の大きな普通型が岩場を占有してしまうため、体の小さな矮小型は巻貝の沢山あるシェルベッドに追いやられてしまうことが明らかとなりました。一方メスでは、普通型は岩場を、矮小型はシェルベッドを好む傾向が見られました。その結果、岩場では普通型のオスとメスが出会い、シェルベッドでは矮小型のオスとメスが出会うため、同じ型同士で繁殖することになります。

 種分化のメカニズムを解明した研究において、「競争」が関係した種分化を実験的に示したのは、本研究が世界で初めてです。

 

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研究者からのコメント

この研究では本成果とは全く異なる結果を予想していましたが、意外にも生殖隔離に「競争」が関わっていることを見つけることができました。このような意外な発見は、研究の醍醐味の一つでしょう。

詳しい研究内容について

書誌情報

Kai Winkelmann, Martin J. Genner, Tetsumi Takahashi & Lukas Ruber
"Competition-driven speciation in cichlid fish"
Nature Communications 5 Article number: 3 Published 28 February 2014