炭酸固定反応を介した新しい核酸分解代謝経路を発見生物的炭酸固定系のルーツ解明に期待

 青野陸 工学研究科大学院生、佐藤喬章 同助教、跡見晴幸 同教授らの研究グループは、ヌクレオシド由来のペントース部位を中央糖代謝に導く新しい代謝経路を発見しました。ペントースビスリン酸経路は真核生物の祖先と考えられているアーキアに存在することから、その発見はカルビン回路の誕生や進化を考える上で大きな手がかりを与えるものと考えられます。

 本研究成果は、英国科学誌「Nature Chemical Biology」の電子版に掲載されることになりました。

概要

 DNA、RNAなどの核酸は必要に応じて細胞内で合成されたり分解されたりします。RNAの基本単位はヌクレオシドにリン酸がついた化合物であり、その骨格部分には炭素原子5個からなるペントースという糖があります。よく知られている真核生物やバクテリアでは、この核酸の糖部分はペントースリン酸経路と呼ばれる代謝経路によって変換され、3個のペントース(炭素数5x3=15)から炭素数3の化合物5個(炭素数3x5=15)が生成し、糖中央代謝系に合流します。一方、地球上には真核生物、バクテリアとは異なる第3の生物アーキアが存在し、進化的に真核生物の祖先と考えられています。アーキアの多くはペントースリン酸経路をもたないことから、アーキアにおける核酸のペントースがどのように分解されているのかが不明でした。

 そこで本研究では、アーキアの一種サーモコッカス・コダカレンシス(Thermococcus kodakarensis)を対象に、核酸の糖部分の分解経路を解明し、ヌクレオシド由来のペントース部位を中央糖代謝に導く新しい代謝経路を発見しました。この代謝経路に関与する主な代謝中間体は、ペントースビスリン酸化合物であることから、ペントースビスリン酸経路と名付けられました。本経路は植物などにおけるカルビン回路の炭酸固定酵素ルビスコを含みます。

 ルビスコの炭酸固定能により本経路では、ヌクレオシドに由来するペントースからの中央糖代謝産物の生成量が従来のペントースリン酸経路と比べて増加します。ペントースビスリン酸経路は真核生物の祖先と考えられているアーキアに存在することから、その発見はカルビン回路の誕生や進化を考える上で大きな手がかりを与えるものです。

図:本研究の概略図
図:本研究の概略図

研究者からのコメント

左から跡見教授、佐藤助教、青野大学院生

 今後は、生物界におけるペントースビスリン酸経路の普遍性を明らかにし、生物の進化に伴ってペントース代謝がどのような変遷を辿ってきたかを解明するとともにカルビン回路の誕生との関係を明らかにしたいと思います。また、生物を用いた炭酸固定技術への利用も検討したいと考えています。
 微生物の多様性は、私たちの想像をはるかに超えるものであり、現在認識されている代謝様式はごく限られた種類の微生物に対する知見に基づいています。ゲノム情報を基盤としてさらなる新規代謝経路の解明を進めていくつもりです。

詳しい研究内容について

書誌情報

Riku Aono, Takaaki Sato, Tadayuki Imanaka & Haruyuki Atomi
"A pentose bisphosphate pathway for nucleoside degradation in Archaea"
Nature Chemical Biology Published online 30 March 2015