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SPIRITS

多点放射線計測と数値気象シミュレーションで解き明かす雷雲高エネルギー現象

研究スローガン

雷と雷雲での高エネルギー大気物理学の創出

キーワード

雷、雷雲、粒子加速、光核反応、オープンサイエンス

研究背景および目的

身近な自然現象である「雷」には未解明の謎が多く残されています。雷が起きる瞬間に上空に向けてバースト的にガンマ線が放射される Terrestrial Gamma-ray Flash(TGF)と呼ばれる現象が大気圏外で発見され、雷に同期した放射線が地上でも次々に検出されるようになってきました。まさに、雷雲や雷放電での「高エネルギー大気物理学」という新しい分野が開拓されつつあります。本プロジェクトでは宇宙観測の技術も応用し、日本海の冬季雷雲を狙う多地点観測ネットワークを構築します。

成果の要約

宇宙X線の観測技術を「高エネルギー大気物理学」の観測に応用し、小型で可搬型の放射線検出器による多地点観測ネットワークを日本海沿岸に新たに構築したことで、雷放電にともなうガンマ線が、大気中の窒素と光核反応を起こすことを観測的に解明することに成功しました(Enoto et al., Nature 2017)。本研究は、英国の Physics World 誌が選定する物理分野の2017年の Top 10 Breakthrough のひとつにも選定され、分野横断の新しい研究分野になると期待されています。

今後の展望

宇宙物理や気象観測、シミュレーション研究などが連携した本プロジェクトでは、大学院生が装置開発からデータ解析、論文執筆まで大活躍し、雷放電にともなって雷雲からのガンマ線放射が停止する現象の観測にも成功しています(Wada et al., GRL, 2018)。今後は、オープンサイエンスの流れの中で市民参加型の観測体制の構築にも挑戦すると同時に、超小型衛星を用いた宇宙からの雷観測などにも発展させていきたいと考えています。

関連写真・図

雷からのガンマ線が大気中の窒素原子核で起こす光核反応(Enoto et al., Nature 2017)

代表者情報

榎戸 輝揚

・代表者氏名:榎戸 輝揚
・所属部局名:白眉センター / 理学研究科
・自己紹介:京都大学白眉センター・特定准教授。2010年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了。博士(理学)。スタンフォード大学、NASA ゴダード宇宙飛行センター/理化学研究所での研究を経て、2015年より現職。X線天文学に加えて、高エネルギー大気物理学の研究を進める。

・関連URL:
http://thdr.info/
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2017/171123_1.html
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2018/180517_2.html