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SPIRITS

病態メカニズム研究や薬剤開発に利用可能な3日熱マラリア肝感染モデルの作製

研究スローガン

病態研究や薬剤開発へ向けた3日熱マラリア肝感染モデルの作製

キーワード

iPS細胞、マラリア、病態モデル

研究背景および目的

マラリアは、蚊によって媒介されるマラリア原虫によって引き起こされる感染症で、世界の人口の約半分がその脅威にさらされています。重篤で、アジアや中南米で主たるマラリアである3日熱マラリアでは、原虫は肝臓で潜伏が可能で、潜伏後数日から 数年後に再発します。このため、症状のない潜伏患者も多く、根絶が難しいマラリアです。しかし現在まで、3日熱マラリアの肝臓への感染の良いモデルが無いため、肝臓への感染や潜伏の研究は難しく、薬剤の開発も進んでいません。本研究では、複数のインド国立の研究所の研究者と共同で、3日熱マラリア患者由来のiPS細胞を作成し、これを感染に適した肝細胞に分化させ、3日熱マラリア原虫を感染させることで、研究や薬剤開発に使用可能なマラリア肝感染モデルの作製に挑戦しました。

成果の要約

インドの研究者と共同で、3日熱マラリア患者複数名と現地非患者1名の血液からiPS細胞を作製しました。また、マラリア原虫が肝臓に侵入する時に細胞への吸着に利用する分子を高発現する肝細胞をiPS細胞から分化誘導する方法も開発しました。さらに、患者血液を現地のハマダラカに与え、効率よくマラリア原虫を増殖・成長させる方法の開発、肝癌細胞株を用いてハマダラカの唾液腺から採取した原虫の感染と検出方法の開発も行いました。そして、作製したiPS細胞を肝細胞に分化誘導して感染実験を行い、世界初となる「患者のiPS細胞由来の肝細胞」で「インドのP. vivax感染」モデルの作製に成功しました。

今後の展望

本プロジェクトで得られた成果は未だ発表できておりません。これを2019年中に論文発表する予定です。また、本プロジェクトで開発した3日熱マラリアモデルにつきまして、これを利用した創薬を目指しており、その実現に向けて現地企業と共同でGHITプログラムへ応募して更に研究を進める予定です。

関連写真・図

本研究の概要
インド国立マラリア研究所の蚊の飼育施設
インド国立幹細胞生物学再生医学研究所の幹細胞施設

共同研究機関

インド国立生命科学研究所、インド国立マラリア研究所、インド国立幹細胞生物学再生医学研究所

代表者情報

長谷川 光一

・代表者氏名:長谷川 光一
・所属部局名:高等研究院 物質−細胞統合システム拠点
・自己紹介:理学博士。専門は幹細胞生物学。熊本県出身、趣味はバイクや釣りなど。生き物の形を生み出すための仕組みや、そのもととなる細胞の研究を行っています。またこれらの研究が生物学だけでなく、病気の治療や予防、薬の開発に役立つこと願っています。
・関連URL:http://www.icems.kyoto-u.ac.jp/ja/wwa/hasegawa/