統合創造学の創成-市民とともに京都からの発信-
研究スローガン
複雑なシステム世界の理解に必要な、異分野融合に基づく統合創造学の創成
キーワード
統合創造学、自己・非自己循環原理、複雑システム
研究背景、目的及び成果の要約
グローバル化によって、私たちの住む地球はますます複雑な世界になってきた。この複雑世界では、人間がさまざまな機械的なシステムと多様に関係している。そのために、システムのほんの小さな部分に1つの挙動が生じるだけで、システム全体におよぶ崩壊を意図することなく引き起こしかねない。それは、複雑なフィードバック過程が働くからである。私たちを困惑させる予想外の課題というのは、多くの場合異なる領域が交わる境界で起こる。そのために、異なる領域にまたがる様々な叡智を結集させて、この世界の複雑な挙動を理解するために、「統合創造学の創成」を目指す必要がある。具体的には、生物学、複雑系科学、医学、社会学、経済学、看護学、生態学、哲学などの統合を目指すことが必要である。20を超える研究集会を開催し、様々な分野から卓越した講演者を招聘した。複雑な挙動―とくにシステム秩序の構築とその破壊―が、同じ根本的原理(自己・非自己循環原理)によって生じうることが明らかになった。そのために、システムの本質を知るためには、システム全体の長時間にわたる観測が必要となる。私たちのプロジェクトをさらに発展させるために、Journal of Integrated Creative Studies (JICS) を創刊した。これは、誰もが自由に閲覧できる電子ジャーナルである。http://icis-kyoto.jp/
今後の展望
私たちの住む現実世界は、様々な種類のフィードバックループによって極めて複雑である。そのために、あるシステムのちょっとした挙動が、そのほか全てに影響を及ぼし、様々な様相を呈して崩壊してしまう危険がある。もちろん詳細は常に異なっているが、崩壊を特徴づけている興味深い特徴は驚くほど共通している。私たちは、崩壊を制御することも、避けることもできない。だからこそ、新しいパラダイムが必要なのである。そのパラダイムとは、崩壊や失敗こそ世界を維持するには必要な出来事ではないか、と捉え直すことである。そのために、崩壊を想定して、それらを緩和できるシステムデザインが要求される。そのシステムは様々に変化する条件の下でも、機能しなければならない。これがレジリエントシステムと呼ばれる新しい分野である。それは、未来を見据えた価値あるアイデアに違いない。
関連写真・図
代表者情報
・代表者氏名:村瀬雅俊
・所属部局名:京都大学基礎物理学研究所
・自己紹介:1987年東京大学薬学博士、東京都老人総合研究所、Duke大学医学部、University of California, Davis 数学科を経て現職、湯川秀樹生誕100年記念国際シンポジウム「生命とは何か」、京都大学国際フォーラム「新たな知の統合に向けて」などを主催。著書に「歴史としての生命-自己・非自己循環理論の構築」など。
・関連URL:
http://www.nics.yukawa.kyoto-u.ac.jp/index.html
http://icis-kyoto.jp/