Research Support
SPIRITS

生物学及び数学モデリングの統合アプローチを介した染色体構造蛋白質の非対称分布の解明

研究スローガン

対称性を破る交叉型組み換えで染色体の自発的機能分割の解明

キーワード

染色体、減数分裂、対称性の破れ、フィードバック

研究背景および目的

位置媒体の配偶子を作り出すため、染色体は減数分裂を経て二段階の染色体分配を行う。第一分裂では、4つの結合した染色体をふたつの対に分けて、その対が第二分裂までしっかりつながっている。線虫C. elegansでは、染色体が「短腕」と「長腕」という2つの領域に分けられて、第一分裂で短腕が分離し、第二分裂で長腕が分離する。短腕、超腕自体は染色体ごとに一個しかない「交叉」という遺伝子組み換えの位置で決められる。染色体領域の長さがどのように分裂のタイミングをコントロールするのかがまだ謎のままである。我々は、定量的イメージングとコンピューター上のモデリングをあわせたアプローチに取り組んでいる。

成果の要約

我々は染色体の「短腕」と「長腕」という2つの領域の内、「短腕」だけに蓄積するタンパク質マークを同定した。超解像度顕微鏡を用いて、3つ以上の領域を持つ染色体を可視化して、「短腕」だけの蓄積を解明する仮のモデルを立てた。このモデルでは、交叉位置に入る因子が素早く拡散し、短い領域の濃度増加速度が高く、ポジティブフィードバックにより拡大されるので、結果短腕と長腕の差が生まれる

今後の展望

染色体は自分の長さを感知するメカニズムを説明する仮モデルを提供するが、その分子機構の詳細は現段階では未知のままである。今後の研究では、ライブイメージングの問題を解決し、コンピューターシミュレーションをさらに改善する必要がある。SPIRITSサポート期間中に育成したインフラストラクチャとコラボレーションは、これらのメカニズムの追求に大いに役立つと考えられる。

関連写真・図

上:トレースされた染色体の超解像度イメージ。短腕がマゼンタ色、長腕が青色、交叉が緑色に染まる。下:短腕と長腕に拡散する因子の進行を示す図。

代表者情報

カールトン ピーター

・代表者氏名:カールトン ピーター
・所属部局名:生命科学研究科
・自己紹介:1995年南カリフォルニア大学生物学部卒、2001年カリフォルニア大学バークレー校博士。2001-2010年カリフォルニア大学博士研究員。2010年、京都大学物質―細胞統合システム拠点独立助教(京都フェロー)。2017年から京都大学大学院生命科学研究科准教授。
専門は、減数分裂における染色体ダイナミクス。