2016.03.30

必要なのは正確な職人技と粘り強さ?!

―― テクニカルスタッフとして、日ごろどんなお仕事をされているんですか?

成田  私と川原さん、宮下さんが所属する山中教授の研究グループは一番大きく、いくつかのより細かいグループに分かれています。私はiPS細胞をもとに、主に移植に使える心筋細胞と血液細胞について研究しているグループに所属しています。そこで心筋細胞や血液細胞を作るためのプラスミド(細胞内の核以外に存在するDNA。染色体とは独立して増殖・分裂する)を作ったり、できた細胞の遺伝子をチェックしたりしています。

川原  私はiPS細胞の樹立メカニズムを研究しているグループですが、主に担当しているのは、化合物のスクリーニングという作業。いろいろな細胞を増殖する培地のコスト削減や反応の向上を目的に、ある成分に代わる化合物を探すのが目的です。ロボットを使ったり、あるいは手作業で何千、何万という化合物をスクリーニングしています。

廣畑  もう手あたり次第、って感じだよね。

narita_kawahara_300.jpg川原  そうですね。膨大な数の化合物をテストするんですけど、どれだけやってもまったく見つからないこともあります。何週間も結果が出ないこともざらにあるし、かと思うとたくさん見つかることもある。

成田  賭けのようなところがあるね。

川原  基本的にダメモトと思ってやってます。だから、適した化合物が見つかったときはすごくうれしいですね。

   

―― 臨床実験につながるんですか。

宮下  私は再生医療用iPS細胞ストックプロジェクトに関する仕事をしています。細胞調整施設で作られたストック用の細胞の品質を評価する試験の一部を担当しています。試験項目がたくさんあるので、スタッフがそれぞれ担当分野を持っています。作業自体は手順や条件がきっちり決まっていますので、それに沿って正確に行って正しい結果を出すのが役目。結構、気を遣いますね。試験全体から見ると、私の担当は下流のほうなので、前の試験が遅れるとどんどんスケジュールがタイトになってしまうんです。それは仕方がないことなんですが、締め切りは動かせないのでプレッシャーがあります。

hirohata_miyashita_300.jpg廣畑  クオリティが大事だもんね。

宮下  がんばってどんどん作業をするんですけど、ずっとやってると、だんだん集中力がなくなってきて…。

廣畑  なる、なる。

宮下  ダメダメ!って言いながら、なんとか切り替えます(笑)。

廣畑  私は再生医療に役立てるための遺伝子の研究をしているウォルツェン・クヌート准教授のスタッフなんですが、プラスミドを作る仕事が多いですね。クヌート先生はレゴが得意で、この遺伝子を緑色に光らせよう、このたんぱく質が出るようにしようなどと、レゴを組み立てるみたいにプラスミドを細かく設計されるんです。で、クヌート先生が設計したプラスミドを実際に作るのが私。ちょうど設計士と大工みたいな関係ですね。職人のようなものです。私が作ったプラスミドからできた細胞をマウスに投与して、その細胞がどのように分化するのかを見るといった実験もします。

廣畑 臨床にかかわる研究は別のグループが行っていて、そこの方から「こういうプラスミドを作ってほしい」という依頼を受けることもあります。通常、作ってお渡ししたプラスミドが細胞に入れられてどうなったかまではわからないんです。だから、実験がうまくいったという報告を聞いたり、研究発表で自分が作ったプラスミドが入った細胞の写真を見たりすると、私が作ったものが役に立ったんだなという満足感がありますね。

―― 精度が重要な細かい作業が多いイメージですが、みなさんはそうしたことがもともと得意なんでしょうか。

成田 わりと好きですね。

川原 私も嫌いじゃないです。

廣畑 私は家ではおおざっぱですよ。家族からも「仕事で細かいことをしているからしょうがない」って思われてるみたいです。

―― テクニカルスタッフとしては、忍耐力とか粘り強さも必要な気がするのですが。

川原 結構、我慢強いタイプだと思います。思うような結果が出なくても、出るまでがんばろうと思えます。

成田 うまくいかないことがあっても、原因があるはずだから、次はこうしてみよう、こっちの方法はどうかな、といろいろ試すのが好きなんですよね。

廣畑 粘り強さも必要だけど、コミュニケーション能力も大切だと思いますね。私たちはあくまでも先生をサポートする立場なので、独りよがりではだめです。私は先生が何を求めているのかを確認するために、こまめにコミュニケーションをとるように心がけています。それができていれば、自分の意見を言うこともできますしね。