京都大学では毎年、学業や課外活動、社会活動などで顕著な活躍をした学生および学生団体を表彰し「京都大学総長賞」を贈っています。大学院工学研究科野田研究室で学ぶ梁永さんは、2013年の受賞者の一人です。表彰理由は「フォトニック結晶レーザの研究成果がNature Photonics誌に掲載されその表紙を飾った。一方で国際交流活動にも積極的に取り組み、京都府名誉友好大使に任命されている」こと。研究員となった今も、最先端の研究に、また国際交流に活躍しています。

社会に役立つ革新的な光技術を発展させたい

――梁さんは中国で高校を卒業してすぐ日本に来て、大学受験を目指したのですね。

梁永 高校生の時、中国にたくさん入ってきた日本の製品を見て、その繊細な物作りに魅了され、日本へ留学したいと思いました。そして日本にいる父親の友人から、大学に入ってから留学するのではなく、早くから来た方が言葉の覚えも早いし、考え方も柔軟だから日本の社会に適応しやすいだろうとアドバイスをもらいました。でも来た当初はやはり言葉で苦労しました。最初の2年間は福岡で日本語学校に通いながら大学受験の準備をしました。

――勉強はさぞハードだったでしょうね。

梁永 留学生が日本の大学に入学するためには、日本留学試験を受けなければなりません。この試験では、日本語だけでなく、数学や物理、化学の試験もあります。京都大学を受けるには、全国上位の試験成績のほかに、相当な英語力も求められますし、結構忙しかったです。でも努力の甲斐あって、幸い合格しました。

――来日した時点で、将来の研究目標は持っていたのですか?

梁永 日本が強い電気・電子技術を学んで、将来的にはエンジニアになろうという夢がありました。大学院の修士まで修了して、日本のメーカーに就職するつもりでしたが、研究を続ける方が向いていると先輩から言われたこともあり、博士課程に進みました。

――野田進教授のもとで研究するようになった動機は?

梁永 学部生のとき受けた野田先生の授業が面白かったんです。最先端の研究について、コンピュータできれいにシミュレーションして見せてくださったのに圧倒されました。野田先生は、基礎の勉強が最先端の研究にどのように生かされるかを、わかりやすく教えてくれ、何のために勉強するのかわからなくて脱落しがちな学生たちを、一生懸命勉強しようという気分にさせてくれます。あと野田研究室は、まさしく世界の最先端で設備も充実しているし、高校時代から憧れていました。漠然とはしていましたが、最先端を学びたいという思いから選びました。

――入ってからの野田研の印象はどうですか?

梁永 先生は研究には厳しくて、メンバーは他の研究室に比べても忙しいほうだと思います。2週間に1回グループミーティングがあり、各人が自分の研究経過等について発表します。そこで先生にアドバイスを求めたりするのですが、先生からは詳細なディテールまで説明を求められたり、意表を突くような角度から質問されるので、しっかり準備しておかないと厳しく追及されます。先生の指摘を確認したり反論するためには、さらに詳しく論文を調べたり実験を重ねることが必要ですから、とても勉強になります。研究活動は成果がなかなか出ず苦しいときもありますが、野田先生にはしっかりとした研究ビジョンがあるのでついていけます。

―― 梁さんのグループはどういう研究をしているのですか?

梁永 21世紀は,光の時代といわれています。私たちの研究室では、光を自由自在に操ることができる光ナノ構造(フォトニック結晶)をキーワードに、その物理的基礎から応用までを研究しています。光ナノ構造固有の性質を発展させることにより、超高効率な太陽電池や多様な機能をもつ次世代型レーザ光源、光のバッファーメモリなど、社会の役に立つ革新的な光技術の実現を目指しています。

――梁さんご自身は、今後どういう研究を目指していますか?

梁永 プリンタやプロジェクターなどでは半導体レーザの出射方向を制御するのに、外部ミラーなどが使われていますが、フォトニック結晶を使えば、レーザーデバイス自身が出射方向を制御することが可能になります。そうすると飛躍的に小型化でき、寿命も長くすることができます。情報通信機器以外にも医療機器など幅広い分野に応用できる画期的な技術です。今後私は、この分野の研究を続けていこうと思っています。

留学生と日本人との相互理解に貢献する喜び

――ところで梁さんは京都府の名誉友好大使に就任されていますね。

梁永 もともと人と交流することが大好きですし、府の国際化推進事業に参加することで、視野も広がると思い、応募しました。自治体などが開く国際交流の催しに参加したり小学校などを訪問して、自国の文化を紹介することが主な活動です。さまざまな国からの留学生が集まって料理教室を開いたり、楽しく活動しています。留学生クッキングワールドカップというのもあって、私は2回連続で受賞しているんですよ。今年度から名誉友好大使活動委員会の会長を務めて、さまざまな国際交流のイベントを企画しています。イベントで、メンバーと日本の人たちとが具体的に交流している姿を見ると、とても嬉しいです。初対面ではコミュニケーションが難しいこともありますが、何かのきっかけで打ち解けて、そこから話が始まると、本当に面白くてたまらないですね。

――梁さんから見て、日本のいいところはどういうところでしょう?

梁永 日本は交通も便利だし、空気もきれいで、そして何よりも治安がいいですね。あと、実際に日本に来て、日本人とふれあうと、海外から見ていたときと印象が随分変わりました。やさしさ、親切、礼儀正しさを実感します。そもそも科学には国境はありません。私たちの研究と国際交流活動を通じて、国境を越えた相互理解の輪が広がっていくことを期待しています。

――私たちもこれからの梁さんの活躍に期待しています。本日はありがとうございました。

留学生クッキングワールドカップのようす
留学生クッキングワールドカップのようす

梁永さんにとっての「京大の研究力」とは?

「自由の学風」を持ち、世界最先端の研究設備が備わっている環境だと思います。また、京都大学には、優秀な日本人学生や研究者だけでなく、世界の様々な国から優秀な留学生や研究者も集まっているので、互いに刺激しあい、研究力を高めあうことができ、それによって新しい発見につながることもあります。これからもこのような恵まれた研究環境のもとで、世界で通用する一流の研究者を目指していきたいと思います。

梁永(LIANG YONG)
京都大学工学研究科電子工学専攻 外国人特別研究員

 

この記事は英文広報誌「楽友 Raku-Yu」24号(2013秋) 11ページからの転載です。原文のPDF版はこちら。(取材当時は工学研究科博士課程学生)