2015.10.30

境界がゆっくりとずれ動く「ゆっくり」地震

――先生が以前から研究されており、近頃はメディアでも注目を集めている「ゆっくり地震」について教えてください。

西村准教授 地震は、数十秒から数分という短い時間に断層が大きく動く現象で、断層から放出された地震動は地震計で観測できます。地震が起きることによって、地下で数十年から数千年もかかって蓄積されたひずみが解消されるのです。しかし、数カ月から数年という比較的長い時間をかけてゆっくりと断層が動くと、地震計では感知できず、大災害を及ぼす地震にはなりません。しかし、ひずみは解消することができます。これを「ゆっくり地震」、もしくは「スロースリップイベント(SSE)」といいます。SSEはGNSSなどを使わないと測定できません。

これまでのGNSSデータから、琉球海溝や南海トラフ沿いで起きたSSEを探知することができました。南海トラフ沿いでは地下30〜45kmの狭い範囲にSSEが集中しています。一方、琉球海溝沿いでは地下10〜60kmあたりに分布していました。過去の大地震は、これまでSSEが一度も検知されたことのない浅いプレート境界で発生しており、SSEと大地震はお互いに補完するような分布で発生しています。琉球海溝沿いではSSEが広範囲に分散していることから、大地震が発生する可能性は低いと推測されます。

 2007年5月10日頃に四国中部で発生した短期的スロースリップイベント(SSE)。南海トラフ沿いのプレート境界では、大地震の想定震源域の縁付近でこのようなSSEが年に数回以上発生しています。Nishimura et al.(2013)の解析より。
2007年5月10日頃に四国中部で発生した短期的スロースリップイベント(SSE)。南海トラフ沿いのプレート境界では、大地震の想定震源域の縁付近でこのようなSSEが年に数回以上発生しています。Nishimura et al.(2013)の解析より。

――いま研究対象として注目している地域は?

西村准教授 まずは山陰地方です。鳥取と島根の両県には目立った活断層がほとんどありません。しかし、活断層は地震による断層のずれが何十回も累積して地形を形成したもので、活断層がないからといって全く地震がおきないわけではないのです。これまでの地殻変動の観測結果から、山陰地方にひずみがたまっている部分(ひずみ集中帯)があることが分かりました。ひずみが限界に達すると、断層がずれて地震を引き起こす可能性があります。 地殻変動の監視のため日本全国には、25km四方に1カ所、合計約1300カ所のGNSS観測点(電子基準点)が設置されていますが、ひずみ集中帯をより詳しく観測するため、両県で注目している地域には3kmおきにGNSSを設置し、地殻変動をよりきめ細かに観測して大地震発生可能性の評価につなげたいと考えています。

次に、メキシコの太平洋岸です。メキシコ南西部のアカプルコ沖にプレートの沈み込み帯があり、日本の南海トラフとよく似た現象がより大きな規模で起きると考えられています。メキシコ沿岸部の現象を調べることで、南海トラフで起こりうる現象が推定でき、大地震にいたる過程を理解するのに役立つのではないかと思います。