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SPIRITS

超高速溶液化学反応の国際共同研究

研究スローガン

水溶液中の化学反応を電子レベルで徹底的に研究する

キーワード

溶液、化学、反応、電子、超高速分光

研究背景、目的及び成果の要約

水は生命に不可欠な液体であり、水溶液の化学反応の解明は化学の永遠の課題と言って良い。本国際研究プロジェクトは、京都大学が世界に先駆けて開発した電子運動を超高速に追跡する実験手段を使って、溶液中の化学反応がどのような電子の運動と水の応答によって起こっているか解明することに挑戦した。生体細胞の70%は水であるが、本研究では水に高エネルギーの光子が照射された際における、電子の放出や溶媒和電子の緩和を明らかにすることができた。

今後の展望

水中で高エネルギー電子が生成した際に、どのように遺伝子を破壊するかを理解するため、水和電子の励起状態から核酸塩基に対する電子の移動過程と分子分解に関する基礎研究を行っていきたい。そのために必要な新しい実験手法を開発していきたい。

関連写真・図

真空中に液体ノズルから液体を噴射し、励起光で電子移動反応を起こさせた後、イオン化光で電子を液体表面から叩き出して電子の速度分布を測定する。光の偏光を回転させると速度分布の変化が観測され、その変化は溶液の電子状態に関する情報を与える。
ジアザビシクロオクタン水溶液について観測された実験データ。100 fs等の数字は励起光を当ててからの時間を示している。fsは10-15秒、psは10-12秒の単位である。異なる色の線は、電子が液面から放出される際にレーザー偏光に依存する様子を示している。(a)から(d)になるにつれて、変化が小さくなっている。

代表者情報

鈴木俊法

・代表者氏名:鈴木俊法
・所属部局名:理学研究科化学専攻
・専門:化学反応動力学、分子分光学
・略歴:1989 分子科学研究所助手、1990 学振海外特別研究員(Cornell 大学)、1991 学振海外特別研究員(カリフォルニア大学バークレー校)、1992 分子科学研究所助教授、2002 理化学研究所主任研究員、2008 京都大学大学院教授
・関連URL:http://www.kuchem.kyoto-u.ac.jp/organization/member/suzuki.html