京都大学アカデミックデイ2015

映像が捉えた野生霊長類の変わった生態

研究者からの一言:みんな好きなサルを好きなテーマで研究しています。

1948年に京都大学で始まった日本の霊長類学。以来、世界各地で様々な野生霊長類を対象に調査が行われてきましたが、まだまだ新しい発見があります。今回は、われわれの研究室の最近の発見のうち、いっぷう変わった彼らの生態について、映像記録のあるものを中心に披露したいと思います。

出展代表者

理学研究科 生物科学専攻
 中川 尚史 教授

参加者

理学研究科
 中川 尚史 教授
 田島 知之 博士課程
 本郷 峻 博士課程

関連URL

http://jinrui.zool.kyoto-u.ac.jp/index.php

来場者より

努力賞
子供が興味を持ったで賞
研究にいたるまでを語ってくれた賞
サル大好きで賞
オラウータン研究が面白かった賞
サルとともに暮らしま賞
わくわく賞
研究の事を賞
猿人類おもしろい賞
研究の裏を赤裸々に話してくれた賞

アカデミックデイを経ての感想

野生霊長類を対象としたフィールドワークを行っているわれわれには、来場者の皆さんに直接お見せできるモノがなく、こうしたイベントに不向きかと思っていました。

しかし今回は、霊長類の「変わった生態」をとらえた映像が集まったことから、3つのテーマを携えて、大学院生とともに初めて出展しました。

幸い映像の効果はあったようで、多くの方々に関心を持って聞いていただけました。

京大生や高校生のみならず、こんなにも大勢の一般の方々が、われわれの研究、さらにはサイエンスに関心を持って下さって、応援もして下さっていることを肌で感じることができ、貴重な経験をさせてもらいました。

われわれも、一層精進しなくてはと気を引き締めると同時に、また新たな映像を携えて参加しようという意欲を掻き立てられました。

ありがとうございました。

フォトギャラリー

研究者の本棚

本出展の参加研究者がお勧めする本をご紹介。

今の仕事(研究、進路)を選ぶきっかけになった本

旅をする木

星野道夫 著 / 文芸春秋,1995年

氷たちが沈黙する雪原の真中で、一本の老木が静かに折れた。氷河に落ちた老木はそのゆるやかな流れに乗り、アラスカの凛とした景色の中をカリブーの群れやオーロラのゆらめきと交感しながら旅を続ける。アラスカに魅せられた写真家、星野道夫が描く動物、植物、そして人々の苦労と喜び。彼の真直ぐで物静かな語り口は、遥か彼方の雪原を私の心に浮かび上がらせ、フィールドでの暮らしへの憧れを強めた。(本郷)

取り扱い: 京都大学図書館/ 京都府立図書館

チンパンジーの政治学

フランス・ドゥ・ヴァール 著、西田利貞 訳 / 産経新聞社の本,2006年

ドラマ『半沢直樹』は好きですか?人間だけでなく動物の社会にも、権力をめぐるドロドロした争いとドラマがある。動物園のチンパンジーだって、毎日社会の荒波にもまれ、必死に生きている。ドラマのてん末に衝撃を受けること間違いなし!人間も動物の一種であることを、この本が気付かせてくれた。(田島)

取り扱い: 京都大学図書館/ 京都府立図書館

今ハマっている本(誰かとこの本について話したい)

群れはなぜ同じ方向を目指すのか?:群知能と意思決定の科学

レン・フィッシャー 著、松浦俊輔 訳 / 白揚社,2012年

群れることで、生物はひとりではできないことも成し遂げられる。「大群イナゴの長距離移動を可能にする単純なルール」「アリの最短ルート発見メカニズム」から、「多数派が正しくなる条件」「スタジアム内で火事に巻き込まれた時に取るべき行動」「100人の候補者から優れた社員を面接で選ぶには?」まで、人間を含めた様々な生物がいかに集団の力を用い、また用いるべきなのかについてのエキサイティングな良書。(本郷)

取り扱い: 京都大学図書館/ 京都府立図書館

贈与論

マルセル・モース 著 / ちくま学芸文庫,2009年

誰かに「プレゼント」をおくったり、もらったりした経験は誰にでもあるだろう。モースは膨大な文献を調べ、文化によらず人類社会には「贈り物」にまつわる共通点を発見し、背後で人を動かしている制度や原則をあぶり出した。私たちは、チンパンジーやゴリラ、オランウータンによる食物分配の研究を通して、人類の贈与の特徴について考えている。(田島)

取り扱い: 京都大学図書館

若者にお勧めしたい本

野生動物の行動観察法―実践 日本の哺乳類学

井上英治・中川尚史・南正人 著 / 東京大学出版会,2013年

野生動物の行動観察のハウツー本。動物園や野猿公苑などで、この本を片手にいかに動物の行動を観察し、いかに記録していくかを、試してもらいたい。(中川)

取り扱い: 京都大学図書館/ 京都府立図書館

日本のサル学のあした―霊長類研究という「人間学」の可能性

中川尚史・友永雅己・山極寿一 編 / 京都通信社,2012年

日本のサル学の明日を担う様々な領域の若手研究者(大学院生から30歳台前半の助教の先生)が、自らの研究について、その内容のみならず、研究を始めたきっかけや苦労話まで論文には書けない、書かない内容を、サル学の「あさって」をになってくれる高校生、大学学部生向けに紹介した本。(中川)

取り扱い: 京都大学図書館/ 京都府立図書館

野生のオランウータンを追いかけて

金森朝子 著 / 東海大学出版会,2013年

「野生のオランウータンを研究したい」日本に先人がいないゼロの状態から、夢をカタチにした研究者のこれまでの歩み。苦労話だけではなく、自分で決めた夢を、自分の力で実現する喜びを感じとることができる。扉を開ける勇気をもらえる一冊。(田島)

取り扱い: 京都大学図書館/ 京都府立図書館

自分の研究に関連して紹介したい本

サバンナを駆けるサル-パタスモンキーの生態と社会

中川尚史 著 / 京都大学学術出版会,2007年

1986年から1997年までの間、アフリカ・カメルーンのサバンナに住む世界最速で走るサルを対象に行った生態研究の紹介本。いかにサバンナに適応したサルであるかがよくわかる。(中川)

取り扱い: 京都大学図書館/ 京都府立図書館

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