マルチスケールシミュレーション法に基づく
機械学習による新奇高分子成形プロセス予測
研究スローガン
ソフトマター流動、特に、からみ合った高分子の溶融体の流動をシミュレートするための物理学に基づく機械学習法の開発
キーワード
ソフトマター、マルチスケール、機械学習、高分子溶融体
研究背景および目的
ソフトマター系では複数の特徴的な長さや時間スケールが内在し、その物性予測のためにミクロとマクロの強い相関を考慮する必要があるが、莫大な計算コストがかかることが問題である。この計算コストの問題を避けるために、近年、我々は履歴効果のある高分子溶融体の構成関係を機械学習法により推定する方法を提案した[1]。このプロジェクトの目的は、現実的な系、例えば、からみ合った高分子溶融体系への適用に対してこの一般的手法を拡張することである。
[1] N. Seryo, T. Sato, J.J. Molina, and T. Taniguchi, “Learning the constitutive relation of polymeric flows with memory”, Physical Review Research 2,033107 (2020)
成果の要約
ML法を拡張・適用し、標準的な高分子からみ合いモデルである土井・滝本モデルの構成関係を学習させた結果、マルチスケールシミュレーションの結果とよく一致し、しかも必要な計算資源を一桁少なくできた。これにより、次世代高分子材料の開発に向けて、現実的な高分子成形加工プロセスがシミュレーションできるであろう。これらの成果は、3本の論文、2本の学会解説記事(日本語)、10以上の国際会議で発表され、2023~2024年度のJSPS学変(A)(公募型研究)の採択にもつながった。また、物理学と機械学習の融合に興味を持つ他の研究者と協力するなど、分野の垣根を越えて研究ネットワークを広げることもできた。
今後の展望
ソフトマターの複雑な流動、特に、からみ合った高分子の溶融体流動を予測する機械学習的手法の開発と改良を続けることで、産業界で使用されている現実的な高分子成形加工プロセスでの流動をシミュレートし、プロセスの最適化を行うことが期待されます。
関連写真・図
代表者情報
代表者氏名:MOLINA LOPEZ John Jairo
所属部局名:工学研究科
自己紹介:ジョンモリーナはコロンビアで物理学を学び、後にパリ第6大学で博士号を取得しました。ソフトマター系(コロイド分散液、細胞組織、高分子溶融体など)の複雑なダイナミクスを説明するための新しい計算手法の開発に取り組んでいる。最近では、次世代のソフトマター材料を設計するために、機械学習技術を標準的な計算物理学のツールにすることに関心を持っている。
関連URL等:https://sm.cheme.kyoto-u.ac.jp/