Research Support
SPIRITS

日本・アフリカ学術研究ネットワークと革新的DNA分析手法を用いた類人猿保全研究

研究スローガン

アフリカ諸研究期間との研究協力ネットワークを確立し、共同で類人猿の保全研究を推進する

キーワード

アフリカ、共同研究、類人猿、DNA分析、遺伝的多様性

研究背景および目的

日本学術振興会研究拠点形成事業と連携し、アフリカの研究者が代表を務めるAfrican Primatological Consortium(以下APC)を設立し、2015年12月にAPCの第1回総会を開催した。またこの総会で、海外拠点大学と大学間協定を締結した。このネットワークを通じた共同研究でアフリカ各地から収集した類人猿の糞からDNAを抽出し、各地域個体群の遺伝的多様性を評価することを目指した。この2年間では、野生ボノボの糞サンプルを次世代DNAシークエンシングの手法を用いて分析し、エクソームと呼ばれる遺伝子領域を網羅的に解析する技術を確立することを目指した。

成果の要約

APC第1回総会で、参加研究者の研究報告を受けるとともに、2016年にアフリカの若手研究者を対象としたトレーニング・ワークショップを京都大学で開催することが決まり、具体化に向けた準備を進めた。またこの総会で、コンゴ民主共和国のキンシャサ大学、ウガンダのマケレレ大学との大学間協定を締結した。2015年度末までに、アフリカ8カ国、欧米5カ国、および日本の研究者約100名がAPCに登録した。DNAに関する研究では、ボノボの3地域収集した71個の糞サンプルからDNAを抽出した。また、3地域4個体の糞由来DNAを選抜し、全遺伝子をターゲットとするシークエンスライブラリの作成を行い、地域個体群の遺伝的多様性とその成立過程に関する分析を進めている。

今後の展望

京都大学内のアフリカ研究者、京都大学を卒業したアフリカの研究者の組織化を進め、京都大学のアフリカ研究拠点の開設を目指す。また、本事業で形成した研究協力体制をもとに、次世代シークセンサーとスーパーコンピューターを用いたDNA解析によるアフリカ大型類人猿の地域個体群の遺伝的多様性とその形成過程を解明する研究プロジェクトや、霊長類の地域個体群の構造とその進化過程の解明を目指す研究プロジェクトを立ち上げ、科研費等の外部資金の獲得を目指す。

関連写真・図

2014年のシンポジウム後のゴリラ調査地視察
2015年に開催したAfrican Primatological Consortium 第1回総会

代表者情報

古市剛史

・代表者氏名:古市剛史
・所属部局名:霊長類研究所
・自己紹介:京都大学理学研究科修士課程でニホンザルの行動と生態の研究に従事したのち、1983年よりボノボの社会・性行動とメスのライフヒストリーの研究、さらに1996年からはチンパンジーの生態学的研究に取り組む。さらに国際NGOであるビーリア(ボノボ)保護支援会を設立して調査地での保護活動と地域住民の支援活動に取り組むほか、国際自然保護連盟の執行役員としてアフリカ大型類人猿の保護活動に取り組む。
・関連URL:http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/sections/social_systems_evolution/furuichi/index.htm
      http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/before2010/shakai-seitai/shakai/BONOBOHP/index.htm