中東社会のカオスを制御するオリーブ生産に関する分野横断型研究
研究スローガン
生物資源生産と社会現象の相互作用に関する普遍的な原理を解明する新たな研究領域の開拓
キーワード
オリーブ、多元社会、水資源、非線型解析、中東地域
研究背景および目的
中東の要衝であるイラク北部では、昨今の社会的混乱からの平和と秩序の回復が、オリーブ栽培などの生物資源生産の復興に伴って徐々に進行している。しかしながら、気候変動下での水資源の適正な配分は、依然として重要課題である。本研究の目的は、農学、社会科学、土木工学、数理科学の連携・融合を通じ、生物資源生産と社会現象の相互作用に関する普遍的な原理を解明する新たな研究領域の開拓である。そのため、地域住民との対話、問題の数理科学的抽象化、解決策の導出と提示を包括した、分野横断的な国際研究チームを構築する。
成果の要約
社会的カオスの中でもオリーブ生産の盛んな、イラク北部のニネベ平原、ならびに、ヨルダン/シリア国境付近のハウラン平原を、対象地域に設定した。一般市民を含む、日本、イラク、ヨルダン間の学際的研究チームを形成し、数次のワークショップを開催した。インタビュー調査を中心とした地域研究に立脚し、社会的混乱の中から新たな秩序が形成されつつある現状を抽象化、普遍化してとらえる、分野横断的な方法論を構築した。研究成果の代表的なものとしては、ニネベ平原における新規的な雨水ハーベスト施設の提案が挙げられる。
今後の展望
交差・退化・特異拡散を含む偏微分方程式系を用いて、社会的な混乱と秩序の消長が普遍的に記述できるのではないかという仮説を、超学際的なチームによるフィールド調査と解析によって検証していく。また、非線型系としてふるまう植物と環境の相互作用に対して、制御理論を導入する。
関連写真・図
代表者情報
代表者氏名: 宇波 耕一
所属部局名: 農学研究科
自己紹介: 京都大学農学研究科准教授(水資源利用工学分野)。1999年に京都大学博士(農学)。最善を目指し最悪に備える水資源の開発と運用を主な研究テーマとしている。
関連URL: https://www.kyoto-u.ac.jp/en/research-news/2021-04-06