ゼプト秒素粒子物理学のための高出力中赤外レーザー開発
研究スローガン
時間領域における新しい素粒子物理学を開拓する
キーワード
中赤外レーザー, 高次高調波発生,アト秒物理,素粒子物理学
研究背景および目的
アト秒物理学の急速な発展の中,この方法論では原理的に素粒子・原子核物理学の様な基礎物理学の研究が出来ないと考えられてきた.一方基礎物理学においては,加速器の更なる大型化が困難となったため従来と異なる方法論が求められている.本研究では,ポジトロニウムや湯川中間子の様な基礎物理学において非自明な不安定粒子の寿命をアト秒の精度で測定することで基礎物理学の諸問題を直接的に検討するという新奇方法論を確立する(Fig. 1).
成果の要約
本研究の特例的な一年間の研究期間,また時田研究室が発足1年目であることから,今回は研究プロジェクト全体のうちの第一段階である中赤外光パラメトリック増幅器の開発までを主に行う計画であったが,光学結晶・光学部品などの調達,来日したウィーン工科大の研究者によるポンプレーザーの最適化,中赤外光パラメトリック増幅器の開発まで計画通りに進めることが出来た(Fig. 2).更に関連する論文1件,招待講演1件,国際学会での発表4件を行った.最後に,代表者は関係する研究テーマで2023年度科研費基盤Bに採択された.
今後の展望
SPIRITSの支援によって強固になったウィーン工科大学との研究交流を継続するとともに,二国間交流事業などを活用しながら他の海外研究機関との共同研究を開拓する.開発したシステムを応用し超高速イメージング[T. Kanaiet et al., Nature 435, 470 (2005)]等の研究を展開する.
関連写真・図
代表者情報
代表者氏名: 金井 恒人
所属部局名: 化学研究所
自己紹介: 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了.博士(理学).ウィーン工科大学(オーストリア),インペリアル・カレッジ・ロンドン(英国),Institut de Ciències Fotòniques(スペイン)などでアト秒物理学を研究した.現在の彼の研究テーマの一つは,アト秒分光法の極限的な時間分解能を用いた新しい素粒子物理学研究の方法論を確立することである.